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やっぱり鳩が好き(最終回)

昨日紹介した、ちょっと疑問も残る不足料使用例とは異なり、今日紹介する後期使用は、ずっと欲しいと願い、ようやく入手がかなった一品です。

スイスは1849年の市民革命の結果、連邦化の推進が決定し、郵政も州郵政から連邦郵政に1849年10月1日をもってかわります。「変わります」とはいうものの、現業ありきの郵政、そんな短期間でやり方を変えるのは無理です。スイス連邦の切手もすぐには発行できません。なのにこの10/1から郵便料金を変更しちゃった。その結果何が起きたかというと、チューリッヒ州やジュネーブ州では、書状の差立てにあたり適切な切手が存在しない状態になってしまったのです。

スタンプレス時代に逆戻りなんて、状況が許されるのか?と思ったのですが、実は当時の人々の郵便差立てで、切手が貼られるケースはせいぜい一割程度だったのではないかという推測が現存する切手貼りカバーとスタンプレスカバーの比較から、導きだされています。つまり郵便料金に合致する切手があろうがなかろうが大勢には影響なかったと言って良いと思います。

そんな中である偶然がバーゼル州に起きます。

新郵便料金(市内便 2.5 ラッペン、市外第一地帯 5 ラッペン)に適応する切手は、チューリッヒ(4、6ラッペン切手のみ存在)やジュネーブ(5サンチームのみ存在)には存在しなかったのですが、なんと一枚しか切手を発行しなかったバーゼル州郵政が出した唯一の切手「バーゼルの鳩」は、2.5ラッペンだったのです。

こうして、スイス国内すべてがスタンプレス時代に逆戻りする(か、もしくは過貼する)1849年10月1日以降も、ただバーゼル州においてのみ、切手が着々と使われ続けたのです。とはいえ、他の州に比べて規模の小さなバーゼル州ですから、この後期使用例は決して多くありません。なので、オークションカタログが到着する度に探していたアイテムで、ようやく展示する事ができました。

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当初は、自分の期待以上の人気者だったために、斜に見ていた「バーゼルの鳩」ですが、こうやって色々と研究し、集めてくる中で、自分自身も愛着が湧いてきました。それはそもそもこの切手自体が製品として魅力的だからかもしれません。

でも、だいぶ集めては来ましたが、やはりマルチプルがないのは寂しいですね。価格が高いのでよっぽどのバーゲンでないと入手のチャンスはないと思いますが、ペアもしくはMix Frankingは欲しいですね。あと優先順位は下がりますが、初期使用例もしくは変わった消印の押されたカバーがあれば言うことなしですね。

ということで、PHILAKOREAに展示するスイスクラシック作品より、日本で人気のある「バーゼルの鳩」に絞って短期連載を書いてきましたが、本日で終わりです。
[ 2014年07月26日 21:33 ] カテゴリ:スイス - やっぱり鳩が好き | TB(0) | CM(0)

やっぱり鳩が好き(5)

世界で最初に不足料切手を最初に発行したのはフランスで1859年の事と言われています。
それまでの間は、スタンプレスカバーがまだ大手を振って流通していた期間も長く、封筒の表面に受取人から徴収する金額を赤字で書いており、そういった使用例が多数残っています。

今回紹介するカバーは、フランスの不足料切手発明の十年以上も前の1848年(そもそもフランスは切手すら発行していない)に、「バーゼルの鳩」が不足料切手として使用された例です。

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このカバーは、スイスの片田舎のWilという街で年に一回オークションを開催しているRappの出品物からの落札です。このオークションハウスは手数料も22%と立派なのですが、昼飯はケータリング、晩飯はフルコースがタダで食べられるオークションで、夫婦同伴での参加者が目立ち、欧州のフィラテリーの社交性を垣間みた気がしました。でもジャパンスタンプの手数料より6%も多く取ってるんだから、それくらいの事しても罰はあたりませんよね。

少々脱線しましたが、そのWilまで行って、フロアでどうしても入手したかったのがこのカバーでした。国際展を意識してコレクションを作り始めると、カントンの展示で、フレームを奇麗に分ける為には、どうしたらよいか常に悩みます。僕の結論というか戦略は、チューリッヒ:2、ジュネーブ:1.5、バーゼル:0.5でした。

この中で最初に悩んだのはバーゼルの半フレーム=8リーフでした。切手が何種類かあるジュネーブや、5タイプ分類がデフォルトのチューリッヒと異なり、普通に考えたら一種類の「バーゼルの鳩」で、8リーフを埋める為には、製造面の研究だけでなく、変わった使用例を揃える事が不可欠だったためです。

「不足料使用なんて初めて聞いた!」ということで競って落としたのはよいものの、後々考えると、少々説明しきれない点もあるなぁとは思いました。また、スイスの他の郵趣家からは、「本当に不足料切手としての使用って言えるのかなぁ?」とも疑問を投げかけられたりもしました。まぁルックスはいいのですが、この辺りの理論武装をする研究をしないと、この先は行けないなと思っています。



[ 2014年07月25日 21:21 ] カテゴリ:スイス - やっぱり鳩が好き | TB(0) | CM(0)

やっぱり鳩が好き(4)

収集再開後ドイツやフランスを中心に収集していた僕が、スイス切手に興味を持ち始めてしまったのは、2010年当時目指していたコレクションと、その実現に非常に魅力的なロットの出現からでした。

当時僕が最も熱心に取り組んでいたコレクションは、「All the stamps of the world First Decade」という国内競争展ですら銀賞しかとれない様な作品でした。

このコレクションを作る中で僕は最初の十年の切手におけるスイス切手の位置づけがたいへん大きな事に気付きます。それは、州政府郵政を連邦郵政とは別個に考えるから余計際立っており、全体の三割近くを占めていました。ゼネラルコレクターであったため、未使用単片は持っているものの、それだけの量のスイス切手のカバーを入手するには手間も時間もかかると感じていました。

そんなとき、初めて参加したあるドイツのオークションの下見で、スイス切手の州郵政からSitting Helvetia までの使用例コレクションがあるじゃないですか。今回の連載初回に紹介したカバー始め、Double Geneve等も入っており、単片は使用済み中心というのも、全く重品が出ず、僕の状況には好都合でした。「これ手に入ったら一気に収集が進むなー」と思いつつも、入札日にはオアフへの旅行が入っている事が判明。初めてのオークションハウスだしメールで入れるのは危険だなーと思いつつ、物欲に負けて多少強気の札をビッド。

旅行中、知らない番号から国際電話がかかり、二度程スルーしていたのですが、最後出たら件のオークションハウスのCEOと名乗る人物が「今のビッドだと落とせないけど、もう一区切り上なら落とせますよ、どうですか?」という怪しさ百点満点の事を宣う。ところが泳ぎ疲れていた為か、電話を早く切りたくて「了解。ジャー一つ上でお願いします。それがファイナルビッドです。」と言ってしまいました。

その後うんともすんとも言わず、二週間後に東京に戻ってくると、その一区切りあげた値段でロットを落とせていた事が判明。まぁものが確かなら決して高くはないので、送金して、そのスイスロット(実際にはアルバム二冊)を入手したのでした。これが、ドイツのオークションハウス、ハインリッヒケラーのCEO ディーター・ミヘルソンとの出会いでした。その後、本当に最後迄競っていて、しかもその相手はスイスのクラシック専門業者のマルクス・ホネガーである事が判明。ホネガーは物はいいんですが小売価格が高い事でも有名なので、そこが競ってくるくらいだったので本当に良いロットだったのだなと状況証拠からも頷ける程、中身は良かったです。

ただ、カバー二通以外には関心なくしばらく経過して、「最初の十年」を見た、外国切手出品者の会・会長の伊藤昭彦さんから「あそこに出した物があるなら、それ以外をあわせて伝統コレクションを作った方がいいんじゃないの?」とアドバイスを受け、半年後にSitting Helvetia までの伝統郵趣としてはやや長い期間をまとめたコレクションの形成に挑戦し、JAPEX2011に初出品した作品がスタンペディア・エキシビションに展示されています。

この作品を展示した時にかなり多くの人から言われたのは「いやー、バーゼルの鳩が沢山飛んでいてすごい作品ですねー。」でした。僕としては非常に複雑で、展示を褒めて頂けるのは嬉しいのですが、むしろ一番注目して欲しいのは、Zurich 6 Rappen のマージナル5枚ストリップだったりしますし、ダブルジュネーブの未使用とカバーのセットも、単片しかないバーゼルの鳩と比べると一段上の次元でいいもんなんだけどなー、と思っていました。

そんな中で「バーゼルの鳩」で自慢の一品がこちら。

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英国リバプールで印刷された綿取引のマーケット新聞がスイス銀行にバルクで郵送され、そこから個別宛先に「バーゼルの鳩」を貼って送ったという使用例です。当時のバーゼル州郵政には、書状より安価な印刷物料金は設定されていなかった物の、これは珍しい印刷物の使用例。そして、切手の貼付けはあくまでスイスからではあるものの差し出し地は国外ということで、非常に面白いマテリアルで、当時の「バーゼルの鳩」2リーフで最も、そして唯一自慢できるアイテムでした。

あれから二年半。日本の方に大人気の鳩の数も約三倍になりました。マルチプルとMix frankingがないね、というのは少しでも国際展をかじった方なら指摘できてしまうのですが、まぁそこら辺は焦らずじっくり進んで行きたいと思います。PHILAKOREA2014の前に開催される全日展にも展示しておりますので、良かったら是非ご覧下さい。




[ 2014年07月24日 20:18 ] カテゴリ:スイス - やっぱり鳩が好き | TB(0) | CM(0)

やっぱり鳩が好き(3)

さて、一口に三色刷りと言っても、当時の三色刷りは極めて原始的です。つまり、黒、青、赤のそれぞれの色毎に印刷版を作り、三回に分けて印刷を行いました。つまり理論的にはベンジャミン社は四色以上の印刷も可能な技術を持っていたわけです。

ちなみに、この印刷版は、枠の中に収めて印刷する形態だったようで、一回の納品が終了すると、中身は外されて、他の受注業務の処理に対応できるようにするために枠をあける運用がなされていました。

19世紀でも後半になれば、郵政から仕事が発注されれば、安定した収益が見込める事が経営者も推定できますが、ヨーロッパ大陸でスイスの地方政府の3郵政以外のどこも切手を使っていない1845年当時に、この仕事の美味しさを理解するのは難しかった事でしょう。納品終了と共に印刷に使われた版は外される事になります。

ちなみに「バーゼルの鳩」は1シート40面の切手ですので、枠に40個の版をはめ込んで、各色の印刷が行われました。ということは、取り外すと120個の小さな版が出てくる事になります。

予想もしない再発注がバーゼル郵政から来ると、この120個の小さな版を取り出し、印刷用の枠に再度あてはめて印刷を行います。昨日も書きましたが、版の中には版欠点があるものもあります。赤の版欠点、青の版欠点、黒の版欠点、それぞれの組合せが、初回印刷と同様になる確率は恐ろしく低い数値です。

この研究を進めた結果、現在では、一版と二版の分類をできる切手が増えており、それぞれの版において、Positionもある程度推定できるまでになりました。このページでは、第二版の変種をポジション情報と共に展示しています。

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「バーゼルの鳩」のポジショニングの研究は、友人のオリジナルスタディであり、僕はその恩恵にこうむり、国際競争展への展示だけでなく、スイスの国内展も含めて、世界初の展示を行っています。昨年のバンコク展では、版欠点の表示方法が下手だったため、現地でご一緒した小判切手の世界的収集家である設楽さんにアドバイス頂いた、鎌倉さんの「震災切手」(金賞受賞作品)の版欠点の展示方法を学び、それを採用しました。

ポイントは切手より説明図を目立たせない為に原則としてカラーを使用しないということで、Photoshopのグレースケールを使用してみました。

ちなみに、このページは、第二版の版欠点の説明に終始している為、消印について全く語っていませんが、二段目右の切手には、長方形の枠内にFRANCOと表示された消印が押されており、ちょっと珍しかったりします。左上から二つ目の黒の斜線の消印もこの切手に押される事は多くはなかったため、ちょこっと珍しかったりします。

ただ、カバーではないので、まぁそこまで主張しなくてもいいかな、と思い、単なる使用済みとして扱い、説明は製造面中心にしました。
[ 2014年07月23日 20:02 ] カテゴリ:スイス - やっぱり鳩が好き | TB(0) | CM(0)

やっぱり鳩が好き(2)

昨日から連載している、世界初の三色刷り切手「バーゼルの鳩」ですが、当時三色刷りというのはハイテクで、その運用ができる会社はスイス国内にはなく、バーゼル州政府はドイツのフランクフルト市にあるベンジャミン・クレブス社(以下、ベンジャミン社)に切手の製造を発注する事になります。

今でこそ、切手の製造を国外に発注する事は珍しいことではありませんが、(日本の印刷局が海外の切手を製造する事もあれば、フランスのカルトゥール社が日本切手の製造を請ける事もある)切手の製造と貨幣の製造が同義に近い19世紀半ばにおいて、この試みは世界初の取り組みでした。まぁそこで切手が漏れるリスクよりも、偽造しやすい切手を製造してしまうリスクの方が高いと、バーゼル州郵政は考えたということでしょう。

普通に考えて、三色刷りは単色刷りに比べて印刷のずれが生じ、不良品の割合が増加します。実際「バーゼルの鳩」には印刷ずれは普通にあり、収集家は状況も状況なのであまりそれを珍重していません。偶発的なずれでは製造面の研究にもならないからです。

むしろそれよりも研究されているのは、自分の手持ちの「バーゼルの鳩」が、1シート40面で印刷された内のどの位置なのかを探す事です。下のリーフに展示している上の切手とカバーは、両方とも上から三段目の右端の位置にある切手(Position 24と収集家は呼ぶ)です。

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なんでそんなことがわかるかというと、鳩の周囲にある赤い部分の更に外側に、「STADT POST BASEL」と黒い文字で囲んでいる内の最後から3、4文字目にあたる「AS」の下に黒い点があるからなのです。この様な版欠点は、先ほど言ったPosition 24にしか存在しない事が研究の結果分かっているのです。

前回の投稿で、「バーゼルの鳩」は人気程には珍しくないと書きましたが、それはあくまでスイスクラシックの中の話であり、切手全般の中では圧倒的に少ない部類の切手です。実際、この切手のシートは残っていないため、残念ながら1シート40面の全ての版欠点が判明しているわけではありません。

このページでは、Position 24を未使用とカバーで展示してみました。片方のシェードが青で、他方が明るい青というのも面白いです。この様に同一ポジションの版欠点を未使用とカバーとか、未使用と使用済みで揃えるとかっこいいので、僕はチャンスがあれば狙っていますが、まぁそこそこ人気のある切手なので、そう簡単にはセットにならないですね。

[ 2014年07月22日 19:26 ] カテゴリ:スイス - やっぱり鳩が好き | TB(0) | CM(0)

やっぱり鳩が好き(1)

タイトルに余り意味はないのですが、PHILAKOREA2014に出品する作品がほぼ完成したので、その中から日本人に人気の高い「バーゼルの鳩」を、数日間集中して取り上げてみたいと思います。

1845.7.1にスイス北部の地方政府だった、バーゼル州政府が切手の発行を開始します。同郵政が発行した切手はこれ只一枚なのですが、(1849年にスイス連邦に吸収される為)世界初の三色刷り切手、世界初のトピカル切手(鳥)ということもあり、日本に限らず世界中で人気があります。

スイスの地方政府で他に切手を発行していたのはチューリッヒとジュネーブだけでしたが、共に1843年に発行を開始しており、それらに比べると残存数は多いと思いますし、希少性は上ではありません。例えばチューリッヒ州郵政の4ラッペンやジュネーブ州郵政のダブル・ジュネーブの方が遥かに珍しく、マーケットでの取引価格も高くなっています。

にも関わらず「バーゼルの鳩」が人気なのは、ひとえに先ほど述べたトピカル図案がウケているのと、当時としてはハイテクの三色刷り切手だった事が、同時代のクラシック切手の中でも異彩を放っているからだと思います。

下のリーフには書状も展示していますが、現代の様にグラビア印刷の雑誌等も存在せず、目にするメディアといえば、単色刷りの新聞しかなかった19世紀半ばに、こんなカラフルな印刷物である切手を貼付けた書状を受け取った人の気持ちはいかほどだったでしょうか。

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ところで、三色刷りの各色は、青、赤、黒なのですが、この内、青については、初回製造時には緑で刷られた事が知られています。また、二回目以降の製造においても、青と明るい青の二種類に、収集家は分類しています。

緑で刷られた「バーゼルの鳩」は、バーゼル州政府から「空を飛んでる様に見えない」という理由で不採用となり、二回目以降の製造では青色のインクが使用されています。このリーフは200DPI画像ですので、違いは分かりにくいかと思いますが、実際の展示においては、明白にシェード違いが感じられると思います。Seoulに持参する前に、錦糸町で開催される全日展でも展示を行いますので、よろしければご覧頂き、違いを感じて頂ければと思います。
[ 2014年07月21日 19:10 ] カテゴリ:スイス - やっぱり鳩が好き | TB(0) | CM(0)
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