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一心ふらんす、郵趣人生(松本純一 著)の感想

在日本外国郵便局切手を勉強しているので、松本純一さんの著作は何冊か所有しています。本格的な収集はしていないので、デグロン君カバーは持っていませんが、在外局郵便局経由のカバーをincoming, outgoing問わず機会があれば入手しており、松本さんの研究からは色々と学ばせて頂いています。

そんな松本さんの著作の中で唯一長らく敬遠していて読まなかったのがこの本です。
松本さんとはご挨拶した事がある程度の間柄でしかないため、深く人物を存じ上げない中、LargeGoldまで行っているし、日本の二大切手団体の一方の会長職にある人だし、失礼ながら嫌な読後感が予想できたため敬遠していたのです。

しかし、今月になりたまたま入手し、早速目を通してみたところ、良い意味で予想を裏切られ、とても素晴らしい読後感を得られたため、お詫びも兼ねて感想文を記し宣伝する次第です。
一つだけ言い訳をさせて頂くと、「一心ふらんす、郵趣人生」・・・うーん、この書籍タイトルも読もうという気にならなかった一つの理由なんだよなぁ。僕が担当者だったらどうするかなぁ。

書籍の大半は、松本さんがサラリーマン生活を全うされながら、郵趣を楽しみ、生涯の収集テーマとして横浜フランス局を選択され、国際展で大金賞を獲得される迄の冒険(と敢えて書かせて頂きます)について書かれています。
年俸100億円のサラリーマンがいる一方で、売上数百万資産無しの企業オーナーも沢山いる現代日本では、「サラリーマンである事」が必ずしも「郵趣をやるための戦力が潤沢でない事」と等価ではありませんので、この点は違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、読者対象として若年層を特別にターゲットしていないと思いますので、良いキャッチフレーズだと思います。

書籍が書かれた当時の時代状況を想定して、サラリーマンでない世界的な日本のコレクターで言うと、金井宏之氏(金井重要工業社 社長)水原明窓氏(JPSグループ 創業者)三井高陽氏(三井船舶 社長、三井家一族)等が挙げられ、そう言った方と比較すると金銭的にも時間的にも郵趣に割く事のできるパワーは限定されていた松本さんですので、国際切手展という競争展で、その様な人々と競い戦う為の戦略を立て、遂行して行く様こそが読みどころの一つでした。この観点からすると、この本は、郵便史部門に限らずすべての国際展出品を考えている人に取って参考になると思います。

松本さん同様に、国際展で大金賞を獲得されている方とお話をすると、その収集の初期に収集範囲を考え抜いて絞り込まれ、それ以外のコレクションを処分してでも軍資金を作る努力をされています。国際展での受賞が郵趣の唯一の楽しみ方ではありませんが、一番最初からベストなtreatmentを考えてこの競争競技に参加するという事は限られたお金で郵趣の一部を最大に楽しむ上では必要な事であり、クレバーだと思います。

松本さんは大金賞まで行った後に結局グランプリを獲得する事が叶わなかった事も言及されています。私自身は国際展に参戦したばかりで、周りの金メダルを見てすごいなー、と言っている段階にようやく来れた水準なので、大金賞とグランプリの区別もよく分かってなかったのですが、この本を通しで読むと、ご自身のtreatmentではよほどの幸運が無い限りグランプリは取れないであろう事は松本さんは予め予測されていた様にお見受けいたしました。しかし、在外局全般に広げずフランス局に絞った為に作品とは別に素晴らしいフランス局の研究所を出せた事も事実であり、この過程には一切の恨み節やじくじくした後悔が見られず真田幸村が家康を追いつめながら最後に諦めたのと同じくらいの潔さを感じました。

ここまで、本書籍の大半である、大金賞を取る迄の大冒険の部分から紹介させて頂きましたが、最後の方には面白い記述が結構ありました。一番痛快なのは、第10章の「困った自称郵趣人たち」の項で、ここはページをスキャンして紹介させてもらいました。後ほどまとめてご覧下さい。いくつか抜き出します。

「自分は功労者・上得意なので、特別待遇を受けて当然と思っている人」
「自分の収集分野以外のことを、合理的な理由なくしてけなす人」
「頭の中の時計が止まっている人」
「やたらと親分風を吹かす人」
「なにかにつけて、自分が創始者・先駆者であると、自慢する人」

僕は何年も前の郵趣組織間の争いを免罪符にして、現在の郵趣界での個人の活動を不当に攻撃をする態度は郵趣の未来を作る観点からマイナスだと考えています。この為、当書籍でもそのような内容であれば読みたくないなーと思っていたのですが、松本さんはそもそも郵趣家をIndividualな存在として捉えられており、組織同士の醜聞の記述は一切なく、また一個人の郵趣家としてこうすべきだという部分は、うるさいお小言等ではなく、むしろ当たり前の事しか書いていませんでした。

僕は郵趣を再開してからまだ5年しか経っていないのですが、当初全く地理間のない外国切手を、最初は友達すら居なかった海外で集め始めたのは、日本の切手サークルは封建的なイメージがあり、「いつのまにか、あの人の弟子になってた!」事があるらしい事を若い時に感じていた事がその最大の理由です。

最近になって、南方占領地例会、イギリス切手部会、萬郵会等、日本の郵趣サークルにも次々と参加させていただくに連れ、少なくともこれらの団体においては現在はそのような事はなく、毎回の会合は楽しんでいますが、更に交流が進んで行きますと、時々、古いタイプの大御所(まさに松本さんが書かれた困った自称郵趣人たちに出てくる様な人)に遭遇し、その度に「おー、いたいた!」と心の中で発見を笑っています。

この本はタイトルからだけでは中身がつかめない良書です。私の拙い紹介文を読むよりも、是非こちらからお買い求めください。
私の最大の後悔は「もっと早く読めば良かった!」です。

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[ 2013年04月06日 18:32 ] カテゴリ:opinion | TB(0) | CM(5)
社会的な地位を郵趣界に持ち込んでくる感覚の人も多いと思います。ちなみに、ある野球チームの応援団に入会したいと会社の取締役が顔役に名刺を渡そうとしたら、みんな同じ立場だと受け取りを断られたことがあるそうです。その方も問題なく入会できたそうですが、郵趣界や団体は封建的であることには同感です。
[ 2013/04/06 22:14 ] [ 編集 ]
こんにちは
shiggyさんこんにちは。
僕も、切手収集再開当時は、日本の切手サークルに封建的なイメージを強く持っていました。ですので、そういう所を避けるようにしています。(笑)

骨董品収集である切手収集には、珍品を所有する人たちだけのサークルが国際的な組織として存在します。日本人も数名入会を認められています。自分もそこに入れるにふさわしい時期が来たら入りたいと考えた事はあります。こうしたサークルは所有する骨董品がものをいうサークルです。好き嫌いは別として、差別化戦略としてこういうサークルはありだし、ジュニアから王様迄楽しむ事ができる、郵趣の奥深さの象徴だと思います。

しかし日本国内にはそのようなサークルは存在しません。一般的な切手サークルで、お山の大将的な人が居るサークルには入りたいと思いません。そして、そのような組織の中の人が例会会員が高齢化している、新しい人が入ってこないと嘆いても、そりゃそうでしょう、と思わずにはいられません。

日本国内にも、会員数が必ずしも減っていない切手サークルは少なからず存在しています。私はそのようなサークルには分野、地域を問わずになるべく入会する様にしています。そして、サークルの中心人物が(1)真に郵趣の知識がすばらしい。(2)人物ができている。という二点を満たしていれば、新規入会する人は増えている傾向を感じました。

この両方を満たしていない切手サークルに時間をつぶす位だったら、インターネットで情報交換できる相手を捜した方がよほど効率がいい時代になったと思います。昔話、与太話だけしている会が人を増やせない理由は明白かと思います。

[ 2013/04/07 09:53 ] [ 編集 ]
展覧会のこと
松本さんの本を読んだのは、小6の頃でした。当時はまだ発刊されたばかりで、郵趣誌や切手展の会場で宣伝を大々的にやっていたことを覚えています。切手収集を始めて間もない頃で、JAPEXを初めて参観したときのことです。当時は小学生並みの小遣いで、切手は面白そうなものは何でも買っていました。切手展のシステムなんて知らないし、切手の会にも何も入っていませんでした。本を買ったのは、切手展のことに関して、リーフ作りなどのことが詳しく書いてあって、興味を持ったからです。最初は切手集めは子供の遊び感覚的なイメージが強かったですが、この本を読んで衝撃を受けました。
正直、読むまでは切手にはだんだん飽きてきていたのですが、以来、切手の文献は積極的に読むようになり、部会にも入会して、収集に弾みがつくようになりました。大学に入って稼げるようになったら、切手展に出品できる作品を作りたい。そして国際展覧会を目指したい!と強く思っていました。
収集を始めて間もない頃に、この本に出会えたことは大変有意義なことであったと思います。
もしこの本を読んでいなかったら、収集はやめてしまっていたかもしれません。


若い層に切手収集を広める際には、展覧会をもっと広めることが重要だと思います。
私が感じるのは、今の大学生は、切手収集は子供の遊びのようなイメージを強く持つようです。
図柄などの興味を促し収集を始めさせても、趣味が多様化している今の大学生には、
正直魅力に欠けます。だいたいは飽きるでしょう。
また、収集は何と言っても、同年齢層の仲間がいるということも大変重要でしょう。

展覧会でやっているような、郵便料金、消印種類、用紙の違い、刷色の分類など、そういう
話を友達にすると、大抵興味を持ちます。中には同じサークルで、入場料を払ってまで、
JAPEXに作品を観にきてくれた奴までいます。

やはり、今の若い世代でも、この例のように、知識的、研究的な興味から、
収集に興味を持つ人はいるということです。
展覧会に出すという目標は、収集の動機となります。
私が収集を断続的に続けてこれたのも、展覧会への憧れ、目標があったからです。
高校受験、大学受験の収集中断期にも、勉強を休んで、JAPEXには必ず行くようにしていました。
たとえ同年代の仲間がいなくても、毎回楽しく参観していました。目標があったので。

「切手展のことばかり考えるのはよくない」
割と耳にする注意ですが、根拠はどこでしょう?
逆に今の現状だと、展覧会から参観させ、興味を持たせる方法が一番だと日ごろから考えています。
文献を読む→マテリアル探し→プレゼンテーション
このサイクルは、今の若い人でも、絶対に興味を引くと思います。
自分の研究を他人に分かってもらうように、プレゼンする趣味は中々ないでしょうし、
歴史、時代を映す封筒や紙片が、興味を引かない訳は絶対にありません。
もちろん、幼年層への啓蒙には当てはまりませんが…

吉田さんが指摘したような、今の収集界の封建的な風潮や、あれはよい。これはダメなど、
集め方をガチガチに固定してしまうやり方も、若者を遠ざけている原因の一つであるといえるでしょう。
また、この世界への入り口は、今は必ずしも開かれたものではありません。
わたしは無理矢理こじあけたようなものなので、スムーズに興味を持って、スタートできるような
いいシステム、方法はないものですかね…

と、いった感じで、収集の原点を思い出す度に、
いつも若者層の収集人口の増加について考えてしまいます。
これから60年間、同年代の収集仲間がいないことを考えると、他人事ではありません!笑
[ 2013/04/08 01:33 ] [ 編集 ]
shiggy
諸問題はさておき、きどさんのご意見の通り、切手展に出品する事は、出品者自身はプレゼンテーション力を醸成できますね。
[ 2013/04/08 07:13 ] [ 編集 ]
きどさん、コメントありがとうございます。
きどさんのコメントには建設的で重要な要素が多く発見でき、僕もはっと気づかされた事が多いです。
コメント返しするにはもったいないテーマですので、時々書いているオピニオンでまたとりあげますので、それまで返答をお待ち下さい。
[ 2013/04/08 09:25 ] [ 編集 ]
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